動画「KUAD通信×なごみLABO 2010年11月」
動画「KUAD通信×なごみLABO 2010年11月」の説明
この動画は、京都造形芸術大学通信教育部の総合教育科目「芸術環境演習 岡山/井原(2010年度)」というスクーリング授業を記録したものです。なごみLABOが制作しました。
開講日:2010年11月1日〜3日
場所:岡山県井原市青野町仁井山地区
協力:下村泰史先生(京都造形芸術大学準教授)、受講生のみなさん
撮影・構成・編集:花田真司(メディアファーム)
企画・監修:仁城亮彦(なごみLABO)
制作:なごみLABO
※ご注意:このビデオは京都造形芸術大学が制作したものではありません。
上の動画は、京都造形芸術大学通信教育部(以下、KUAD通信)のスクーリング科目「芸術環境演習」の様子を記録したものです。(2010年11月)
授業では、なごみLABOを拠点に地域の祭りの日を過ごしつつ、地域の生活資源を芸術の教育資源に変換する芸術環境の実践を試みています。これはある特定の作品作りのためのものではなく、なごみLABOによる「地域でのもう1つの生き方の探求」と、KUAD通信による「芸術環境」という思想や実践との出会いそのものです。
KUAD通信×なごみ農園=なごみLABO
これまでは「なごみLABO」ではなく「なごみ農園」として授業をホストしてきました。過去に5年間で4回です。なごみ農園は小さなぶどう農家ですが、授業をする以前にも農家としての生き方の探求はありました。そしてこの授業からも「なごみ農園」はたくさん学びました。
この授業は毎回変化しており、その時々に固有な内容にしています。授業を重ねていく一方で、家族としての「なごみ農園」にも変化が起きます。例えば、授業を経験して家族それぞれの生活の目標や習慣などは変わりましたし(大家族になった)、また高齢化したり、新しい家族もふえたりしました。そういうことはダイレクトに授業の内容に影響を与えます。
こちら側としては、授業を「なごみ農園」という家族として受けていますから、変化した家族は授業でパブリッシュされざるを得ない、家族としていかに生きていくか示さねばならない、そう意識することになるのです。そんなこんなで、この地域の生き方の本質をより普遍的に探求しなければならないと感じるようになり、そこに「なごみLABO」が見えてきました。
KUAD通信×なごみLABO=?
なごみ農園とKUAD通信が、なごみLABOを産んだのです。これからはなごみLABOがなごみ農園を更新しつつ、KUAD通信との授業を新たに展開して芸術環境を実践していくことになるでしょう。その第一弾が2010年の授業であり、こうして動画の記録を残したこともその1つです。
この動画はDVDにして、KUAD通信を通して、受講生全員に配布することができました。とても時間がかかってしまいましたが、それにはこうしてWeb上で動画を公開することの許しをみなさんにいただく手続きにかかった時間も含まれています。しかし一番の原因は、なごみLABOの仕事の遅さによるものです。
ともあれ、ようやくこうして公開することができました。下村先生をはじめ研究室の先生方、事務局スタッフ、受講生のみなさん、本当にありがとうございました。
仁井山地区との関わり
今回の授業では、活動拠点や宿泊を目的に、はじめて仁井山公会堂をお借りしました。今までは、活動拠点としては、なごみ農園の農場や親戚の古民家などを活用してきましたが、大学のみなさんの宿泊は市街地のホテルでした。そこで、なんとか宿泊施設のないこの地域に一晩みんなで泊まってもらうことを実現することはできないか(授業の内容に深夜2時まで備中神楽がおこなわれる宵宮(秋祭りの前夜祭)への参加がある)ということで、仁井山自治会に働きかけることになりました。それは必要に迫られて、ということではありましたが、一方でこの授業の非常に大きなターニングポイントとなることははっきり意識できました。
今までは仁井山地区内での授業とはいっても、誰かの許しを得る必要は特になかったので、それゆえ、授業についてうわさ以上のものは地域に伝わることは基本的にありませんでした。ある年の授業では、地区のお年寄りに神楽の神殿(こうどの)作りや縄綯いなどのご指導をいただいたこともあり、その方々を通してはうわさ以上の話になったのかもしれません。それでも、その関わりは個人的な、なごみ農園のプライベートなコミュニティを出るものではなかったのです。
仁井山公会堂は仁井山自治会の会合、いわゆる寄り合いのためにあるものです。したがって流しやストーブなどの設備はあっても、宿泊はもとより、その寄り合い以外の利用すら想定されていません。これまで、地区から市議会議員を選挙に出すときに事務所として使うことはありましたが、それも特別なことでした。どこかよその団体の活動拠点や宿泊施設として使用するなどは、当然前例のないことです。
加えて、授業の目的がこの仁井山地区の文化や暮らしにアクセスするというものであり、地区自治会としても、自治会長さん1人が「別にいいんじゃないかな」といってすませるわけにはいかない内容です。そういう責任感からも、また地区の過疎化などの現状になんらかのよい影響があるかもしれないという期待感からも、授業の3日間に公会堂の使用をする(直接的には人的な協力は必要ない)話であれ、地区住民にしっかり話を広げておかねばならないと、自治会役員の方々からは、むしろ積極的な意識を感じました。
当時の自治会長さんと相談しながら、仁井山公会堂をお借りするために次のような手続き踏んでいきました。
1、自治会役員に大学、授業に関する資料を提出する。
2、授業の代表としてぼくが会合への出席を求められる。
3、代表として会合に出席し趣旨を説明、公会堂を使用させていただくようお願いする。
4、出席者から使用の条件、免責事項などが示される。
5、各組の役員が仁井山地区全戸に使用願いのコピーを配布する。
6、覚書を交わし、正式に使用の許可をいただく。
青野地区との関わり
仁井山地区は青野町に属する1つの集落ですが、青野地区という場合は青野町、北山町、稗原町を会わせたエリアをさします。その青野地区の文化・産業祭(以下、文化祭)にて、スクーリング(京都造形芸術大学通信教育部「芸術環境演習」)の紹介を行いました。
一般展示の部を仁城個人がお借りするという形で、内容は授業で学生達が制作した「仁井山マップ」を壁面に貼り、「記録ビデオ」を繰り返し再生、そしてなごみLABOのパンと仁井山産の小麦、製粉に使用する石臼を展示しました。文化祭の展示については毎年代わり映えがない中、珍しいモノがあるということで、スクーリングの紹介をしたコーナーに多くの地域の方々が足を止めてくれました。学生が作った仁井山マップについて、青野地区公民館館長さんも熱心に質問をしてくださいました。
また、ステージでの演芸大会のプログラム内でスクーリングを紹介し、記録ビデオの一部(2日目の部分)をプロジェクターで上映しました。動画とナレーションによる紹介は、住民の皆さんには伝わりやすかったようです。音声がちゃんとPAを通して会場に十分に流れていたので、住民の皆さんが団体のブースや屋台などにいながらでも、紹介されている内容はよくわかった、とのことのことです。
ビデオ上映の後に、パンの試食会をしました。パンは学生がスクーリングで作った同じようなレシピによるもので、地域の方々も同じパンを食べて、何とか食べることの共有もなされ、より具体的に授業の内容が伝わったのではないかと思います。
こうしたやりとりをしていくことで、授業は仁井山地区、そして青野地区で認知されることになりました。
地域からの反応
文化祭では発表の準備や展示コーナーでの待機などで、直接は聞けなかったのですが、なごみLABOの活動を知った青野ぶどう部会という農家組織の新しい幹部連中から「コラボレートしましょうよ!」と熱いラブコールがあった、と、家内から聞きました。
全国から20人以上の社会人が、自発的に、交通費、授業料を払ってまで青野にやってくるというのは、このスクーリングに「何か」があるからだろうけれど、ぶどうの後継者不足問題や耕作放棄地問題などの対策についても、そういう「何か」が必要だとは感じていて、でもそれがわからなくて苦労していると、そういう話をしていたとのことです。
ぼく自身も一応ぶどう農家の息子だし、個人的に今のぶどう農業に対して思うことはいろいろありますが、その「何か」が地域の生活と大学の授業やなごみLABO の活動を結びつけるものとして機能するなら、しっかり地域の農家を巻き込んで、いろいろな議論の場も作れたらいいなと、なごみLABOから地域に向けても何らかの提案をしていきたいなと、今後の展開を楽しみに取り組んでいきます。